日々をていねいに生きることを、私はすっかり忘れていた
長いあいだ、私は「どうやって生きてきたんだろう」
と思うことがよくあります。
25年以上フルタイムで働き、独身で、実家暮らし。
時間はあったはずなのに、丁寧に過ごした記憶がほとんどない。
朝は目が覚めていても、布団から出られずに過ぎていく時間。
気がつけば、そんな朝を何十年も繰り返していました。
「朝散歩」という、小さな贅沢
フルタイム勤務を離れた今
もちろん不安がないと言えばウソになります。
でも――
朝のゆったりした時間が、
こんなにも心を豊かにしてくれるなんて知りませんでした。
「朝散歩が体にも心にもいい」と聞いて、
後期高齢の母を連れて近所を歩くようになったのは、ほんの気まぐれです。
通勤ラッシュをすり抜けながら、
おばさんとおばあさんがのんびり朝散歩。
少しおかしな光景だけれど、これが意外といい。
心も体もふっと軽くなるから不思議です。
ちなみに…因果関係があるかわかりませんが
散歩を始めて半年ほど経ち
母の血糖値の数値が20ほど下がりました。
ひとりで歩けなくなった親の手を引くのも親孝行なら、
自分で歩ける親と並んで歩くのも、ちゃんと親孝行。
そんなことに気づいたのは、つい最近のことです。
しかし、むしろ私のほうが楽しんでいる気さえします。
ベランダの干し柿が教えてくれた“ゆっくりする豊かさ”
散歩中、ベランダに干し柿が並んでいる家を見つけました。
「うちでもやってみる?」
“おばさんおばあさん会談” 即決。
早速、渋柿をGET!
気づけば20個以上の柿の皮をむいていました。
ベランダに吊るされた柿
洗濯物を入れながら眺め
外出から戻ってベランダを眺める
人生でこんなに“ベランダの様子”に一喜一憂したことがあっただろうか。
2週間後の実食。
「うっ うまい…!」
料理に興味のなかった私が、干し柿の味に感動する日が来るなんて。
人生は、時々ほんとうに予想外の方向へ転がります。
地味な暮らしのなかにも、確かな贅沢がある
豪華でキラキラした日々も魅力的だけれど、
地味な日常の中にも、贅沢はある。
朝の静けさ、母と歩く時間、
ゆっくり熟していく干し柿。
そのすべてが、
「日々をていねいに生きている」という実感を、
少しずつ私に教えてくれています。
そんなことを思いながら、
今日もまた、寝ぐせのまま散歩へ出かける朝が始まります。
「あなたの“小さな贅沢”は何ですか?」

